アトムグループの創業期から、修斗会長を支えてきた元ホストの水城麗(森本圭)さん。アトムグループ初となるフランチャイズ店舗の立ち上げや経営などを経て、2021年にASP事業、Webのコンサルやマーケティング、制作などを担う株式会社PROSPADEを創業。今回は代表取締役として指揮を執る森本さんに、「ホストのセカンドキャリアを支援したい!」という考えに至った経緯や想いを伺いました。
青春を捧げ、アトムで駆け抜けた20代
─学生の時に、ホストとして活躍されていたそうですね?
大学が理系で材料開発を学んでいたこともあり、数学や化学を教える塾講師をしていました。時給は良かったのですが、2コマ分の授業しか担当できないので、夏休みにお金を得られるアルバイトを探していたんです。すると求人誌に「高収入」の文字が。早速行ってみると、キャバクラのボーイでした。正直、自分に合わないし、怖そうなので働く予定は無かったんです。
ただ、両親にその話をしたところ「圭は世間知らずだから、世の中の大変さを知った方が良い」と。それで、夜の世界の仕事を経験しようと考えました。
─その後、アトムの黎明期を支えるポジションに。
ホストになったのは、様々なお客様と縁を結ぶことになり、「同じ夜の仕事でも、もっと稼げるよ」と教えてもらったのがきっかけですね。ただ、ホストは「1年で辞めよう」と決めて始めました。大学の時は「学生生活だけだと、退屈に感じるだろうな」というモチベーションでしたので(笑)。
学生時代が終わり、就職活動をして、内定ももらっていました。しかし、現在のアトムグループの会長である修斗さんと知り合いだったこともあり、当時黎明期だったアトムでホストや運営をする道を選びました。約15年間、20代を全力で駆け抜けたので、私からすると「青春を捧げたところ」ですね。アトムは(笑)
─フランチャイズ展開も手掛けたと聞きました。
20代を終えて別の道に進むことを考えていましたが、部下やメンバーに、「麗さんと一緒に仕事がしたい!」と熱く言ってもらったんです。そこで、組織で活躍するだけでは無く「独立してアトムのビジネスパートナーになる方法もあるよ」という事例を示したいと考え、修斗会長にフランチャイズを提案。共同出資で立ち上げました。それが31歳の時ですね。運営は軌道に乗っていたのですが、コロナ禍となり、閉店するという経営判断を下しました。
コロナ禍をきっかけに、IT企業を創業。
─なぜ起業されたのですか?
コロナ禍時代に突入した時、どれだけ長引くかわからないし、ホストたちが食いっぱぐれないように何とかする方法は無いか、修斗会長と話をしていました。ホストはずっと現役を続けるプレイヤーもいますが、年齢を重ねると“引退”を選ぶ場合もあります。なので「セカンドキャリアの形成を応援する」ことは必要だなと。
ITを選んだ理由は廃れない業界だからです。元々、アトムの時にホスト紹介の動画やPV、記事といったコンテンツの制作、表彰式のメイキングや、マーケティングなどを手掛けていたので、Webのことを少しかじってはいました。そこで「オンラインとオフラインの統合」を強みとした当社を立ち上げることにしたんです。ITは時流に即したスキルを身に付けることが出来るので、セカンドキャリアの支援にもピッタリだなと。それが2021年ですね。
自社では広告やWebマーケティング、Webのコンサル事業を行なっています。自社サービスである「AD-SPECT」をリリースし、「うちのクリニックを手伝って欲しい」「ペット関連のネット広告を打ちたい」といった案件が発生するケースも多いですね。
─経営者として、大変なことはありますか?
正直なところ、ベンチャー企業なので苦労だらけなんですが「しんどい」と思ったことは無いです。周りからみると、創業期の「経営も営業も制作も、全部を自分でやらなければならない」のは辛いことなのかも知れませんが、私的には楽しい。この辺りは、ホストでメンタルを鍛えられたおかげですね。
─ホスト時代の経験が活かされている点はありますか?
最も強みを活かせたのが新規開拓。営業は100人に当たって、ひとり反応があるかどうかの世界です。当社も最初はとにかくDMを送りまくりました。そこから様々な方と繋がり「とりあえずお話をしましょう」と、商談に結びつけていますね。また、ホスト時代のコネクションも営業面で活かされていますね。
戦略の立案や課題解決、ブランディングの領域にも、経験が役立ちました。ホストはセルフブランディングの世界なので、当時本などからランチェスターやトヨタ式といった戦略を片っ端から学び、実践していたので、その成功体験は武器ですね。
ただ、ITの専門領域について、最初はわからないことだらけ。幸いなことにうちには、元大手で案件を手掛けていたマーケティング担当やエンジニアなど、スペシャリスト人材が揃っており、技術的には私の100倍は優秀(笑)。良い仲間に支えられています。
引退したホストたちの受け皿になり、次の一歩を踏み出す勇気を応援。
─イチから教え、成功体験を積んで欲しい。
受験で言えば、基礎が出来なければ応用問題は解けません。まずは研修で、基礎からレクチャー。そして、その人がやりたいことや、向いていそうなことを任せてみて、成功体験を積んでもらうことから始めたいと考えていますね。動画ソフトを始めとしたツールの使い方については、全てマニュアル化してまとめているので、「こんな時には、このように対処する」というケーススタディが揃っています。会社が積み重ねてきた事例も共有しますので、わからないことはすぐに調べられる環境です。
─その先はどのようなキャリアがあるでしょうか?
当社の従業員として勤める道も、「独立したい!」という方はフリーランスや経営者になり、ビジネスパートナーとして活躍する道があります。第一線でバリバリやっていたホストの中には「一国一城の主」というマネジメント力があるタイプの方も多いですから。
従業員として求めるのは「気合」だけですね(笑)。たとえば「10年ホストをしていたが、芽が出なかった」という方も、同じことを継続してきたガッツを買います。ITはパソコンひとつあれば、どこでも生活できるので、未来のある仕事だと思いますよ。
─これから挑戦したいことや、将来の夢、ビジョンなどを聞かせてください。
目指しているのは「社員全員が月収200万円」を可能にする会社。現在従業員は5名ですが、大所帯にする気はありません。全員が幸せになるために、目配りが出来る組織は10名程度だと考えているので、組織が大きくなったらホールディングス化し、新しい城をドンドン任せていきたいです。アトムで学んだ「楽しく仕事をする」を当社でも具現化していきます。
個人的な夢としては、農業に興味がありますね。ITはデスクワークなので、汗をかいて生産することは、一度やってみたいなと思っています。