ホストクラブ最激戦区である東京・新宿歌舞伎町において、異色の輝きを放つ「ATOM -TOKYO-」。そんなATOM-TOKYO-でチーフを務める海太さんは、さまざまな問題を乗り越えながら現在の体制を築き上げた「陰の立役者」です。今回は、内勤という枠組みを超えて活躍されている海太さんに、教育面での重要なポイントや現在の体制に至るまでの経緯などについてお話を伺いました。
プレイヤーの持つ性質に応じて、カスタマイズした教育を実施
―歌舞伎町という大阪と異なる土地で、ゼロから出店して店舗を作り上げるために重要なことを教えてください。
一番重要なのは「教育」ですね。
ライバル店が多いので、移籍金とかを積まれてどんどん引き抜かれてしまうんです。
だから、最初のうちは経験者が入店してこない前提でやるしかなくて。
まずは「教育面で歌舞伎町トップを獲ろう」という気持ちで取り組んでいました。
その結果、1,000万プレイヤーも1億円プレイヤーもゼロから育てることに成功したので、それが自分にとって一番よかったと思う点ですね。
―未経験者を1,000万プレイヤー・1億円プレイヤーまで仕上げていくためのポイントはありますか?
ホストとしての教育だけではなく、人間力についても教育していく必要があります。
―まず、ホストとしての教育で重要なことは何がありますか?
大事なことがありすぎて一概には言えませんが……。
強いて言うなら「言われたことに対して、どれだけのスピード感と期待以上のクオリティを持ってこられるか」という点は重視していますね。
言われたことを実行するまでに1週間かかる子もいれば、次の日には終わっている子もいる。
そこのスピード感はすごく大事かなと思っています。
―とにかく場数を経験するとか、思考の回数なども重要ですか?
そうですね。
基礎はしっかり教えるので、素直にそれができる人は売れていくと思います。
逆に、言うことを聞かずに何でも自己流でやってしまう人はなかなか売れないですね。
―人間力の教育についてのポイントはありますか?
「売上が上がれば上がるほど、周りへの感謝の量も増えるからな」ということはいつも伝えていますね。
売れたことで慢心してしまい、感謝の気持ちを持てない人はすぐにお客様も切れてしまいます。
例えば、遅刻したとしても「罰金払えばいいんでしょ」というスタンスになって、変に勘違いしてしまう人も中にはいるんです。
そういう部分をしっかり教育することで、1回だけ1,000万円を売れる人間ではなく「1,000万円をいつでも売り続けられる人間」になってほしいと考えています。
あと、当たり前ですけど「報告・連絡・相談」は徹底するように教育していますね。
そこも売れるために重要な「スピード感」につながる部分だと思います。
特に若い子に多いのが、一時的に売上が上がったとしてもすぐにお客様が切れてしまうという問題。
売上が上がったときに、しっかりお客様や周囲の方に感謝することができないと、売り続けられるプレイヤーになっていくことは難しいです。
「すごいのはあなたじゃない、お客様だよ」ということを、プレイヤーには常に伝えるようにしていますね。
それに、売れているプレイヤーも感謝のマインドをしっかり持っているので、天狗になっている子を見つけると「勘違いするなよ」と言ってくれるんです(笑)
上層部にそのマインドが浸透しているので、組織として良い循環が生まれています。
どこに行っても通用する「謙虚で周りに感謝できる男」になってほしいですね。
―プレイヤーを一律に教育するということは、現実的に難しそうですね。
できないですね。
各プレイヤーの成長度合いと、人間としての成熟度合いに合わせた「カスタマイズされた教育」を意識していくことが重要だと思います。
首脳陣の交代劇を経て、体制を刷新
―ATOM-TOKYO-は以前の運営体制からかなり変わった印象がありますが、海太さん自身はどのように感じていますか?
そこは意識して変えましたね。
以前は看板プレイヤーを育てて、そのプレイヤーにお店を引っ張ってもらうスタイルだったんです。
だから正直、8~9割のことは目をつぶって好きにやってもらって、サポートだけを全力でやるようにしていました。
ただ、プレイヤーと運営陣のパワーバランスに偏りがあると、慢心したプレイヤーを生み出す要因にもつながってしまって……。
これは僕の失敗体験ですね。
プレイヤーが気持ちよく働けるような環境づくりに注力していたつもりだったんですけど、影響力が偏りすぎるのもよくないということを学びました。
今は、プレイヤーと運営陣のパワーバランスが5:5になるような店づくりを心掛けています。
―ATOM-TOKYO-で特に印象に残っている成功体験はありますか?
去年は売上1,000万円プレイヤーの輩出を何度か目指したんですけど、全部失敗に終わってしまいました。
でも、なんとか下の子たちに1,000万円プレイヤーの背中を見せたいと考えていたんです。
当時新人だった柚貴れんにも「おまえが1,000万円プレイヤーになってくれ」という想いを伝えていました。
そこで実行した施策が「元YouTuber へずまりゅうとのコラボ」です。
あのコラボで、1,000万円を売る人の背中や努力の仕方を見せることができました。
―あのコラボには賛否両論あったとお聞きしました。
たしかに賛否両論ありましたね。
ですが、あのときは売上も落ち込んでいましたし、守るべきものが少なかったんです。
だったら起死回生のために賭けてもいいんじゃないかなと。
その結果、2か月後・3か月後には連続で1,000万円プレイヤーが誕生しました。
未経験者をイチから教育し、へずまりゅうとのコラボという施策を打って1,000万円プレイヤーが誕生したことは、自分にとって大きな成功体験になっています。
―これから活躍したいと考えているプレイヤー・内勤にメッセージをお願いします。
昔すごかった人のなかには「昔のホストは―」とか「昔だったらそういうの許されないよ」って言う人が一定数いて。
そういう昔を語ることって、あまりカッコよくないじゃないですか。
過去にどれだけの栄光があったとしても「今を勝負できる圧倒的な力」が必要だと僕は思います。
それと、上に立つ人間には未来(ビジョン)を語る能力も必要です。
僕は毎日1時間本を読むことで、常に新しい知識を身につけるようにしています。
そうやって得た情報からビジョンを構築し、従業員を引っ張っていけるように意識していますね。
―現在、ATOM-TOKYO-でお伝えしているビジョンを教えていただけますか。
2022年は、この目標に取り組んできました。
- 1. 1,000万円プレイヤーを5人輩出
- 2. 売上アベレージ3,000万円(小計)
- 3. 組数100本プレイヤー誕生
そして、2023年
の目標はこのように伝えています。
- 1. 武華冬夜、柚貴れんを1億円プレイヤーにする
- 2. 新たな1,000万円プレイヤーを3人輩出し、計8人の1,000万円プレイヤーが在籍する店舗にする
- 3. 店舗の拡大移転
―ATOM-TOKYO-から見た、大阪の店舗の印象はどうですか?
やっぱり箱がキレイだなと思いますね。
歌舞伎町ではなかなか良い物件が空かないので……。
ただ、将来的には今の2.5倍くらいの規模の店舗に移転して、そこを本店にしたいなという想いはあります。
―移籍金を積まれることが多い歌舞伎町において、金銭面以外でATOM-TOKYO-がアピールできる魅力を教えてください。
歌舞伎町のホストって、他店の話を聞くと「従業員同士がめちゃくちゃ仲悪い」といった話をよく耳にします。
その点、ATOM-TOKYO-は「ONE TEAM」のスローガンのもと、一致団結することを大切にしています。
僕自身、自分の趣味にみんなを巻き込むのが得意ということもあって、店外での交流も積極的に行っているんです。
ビジネスだけでなく、友達としても居心地の良い場所だと思ってもらえたら、簡単には辞めないですよね。