現在「ATOM -RE:RAISE-」の社長として、経営に注力しているりきさん。大学生のときに代表になり、その後2店舗の社長を任されるといった経歴をお持ちです。しかし、輝かしいキャリアの裏で、実はつまずきも経験されたとのこと。今回は、苦悩したからこそ学べたことや、現在実践されている経営スタイルなどを語ってもらいました。
学業とホストの社長業を両立。密度の濃い学生時代を疾走する。
──ホストデビュー後、大夢さんを誘った経緯をお持ちだそうですね。
大夢は中学校のときの同級生で顔見知りだったのですが、別のグループに所属していたので直接的なつながりはありませんでした。大学に入学して、「面白そうなアルバイトがしてみたい」と思って僕がホストを始めた頃、「100人の客を呼べるバーのスタッフがいる!」という噂を耳にしたのです。それが大夢でしたね。絶対スターになると思って「一緒にホストをやろう」と声をかけたのですが、実際に入店後メキメキと頭角を現していきました。
──りきさん自身も、プレイヤーを経てすぐに代表になり、プレイングマネージャーとして活躍されていますね。
代表として現場に出ていたときの最大売上は月1,400万円くらいでした。今は「呼ばれたらホストとして現場に出る」ことがあるくらいで、基本は社長業に勤しんでいるのですが、この記録を最近塗り替えましたね。これは昔からずっと応援してくれているお客様のおかげで、本当にありがたいです。当時は21歳で主任でしたが「上のポジションにいけば、もっと面白くなりそうだな」と思ってお受けしました。代表になり、プレイングマネージャーとしての責任感も芽生えたことで、より本気でホストの実務にも力を入れるようになりましたね。
──その後、代表から上のステージの社長へ。どのような変化がありましたか?
代表になって最初の頃は「自分が売上をつくって、お店に貢献すれば良い」と考えていたので、正直なところ「お店全体の数字」を追求するような動きはしていなかったですね。代表から社長になったのは、在籍していたお店が店舗拡大したタイミングでオファーをいただき、「Stella」「Astra」の2店舗の社長という役割を任せてもらいました。その頃から「経営」を意識するようになりましたね。「自分だけが影響力を持つ」のではなく、幹部やメンバーたちそれぞれが影響力を保持して欲しいと考え、現場から一歩引いて俯瞰的立場で運営にたずさわるようになりました。
──今年大学を卒業されました。学生生活との両立は大変ではなかったですか?
仕事で疲れ切ってしまって、大学に通うための電車を寝過ごすことはしょっちゅうでしたね。特急に乗って気づくと終着駅で、逆の路線に乗り換えたらまた寝過ごして終着駅だったことも良い思い出です。ただ、そうした生活を「しんどい」と思ったことはほとんどないですね。留年もはさんだのですが、最後まで踏ん張って卒業したことで、今頑張っている学生のホストに「学業と両立できる」を背中で示すことができたのが嬉しいです。あとは、親の存在も大きいですね。辞めようと思ったこともありましたが、「できれば卒業して欲しい」と言われていたので、卒業することで恩返しできたという気持ちもあります。
順風満帆の裏にあった苦悩とつまずき。そして、得られた教訓を活かす。
──「早期昇進のキャリア」のうらで、悩まれていたことがあったそうですね。
代表になる前、以前アトムが展開していた「Stella」「Astra」という2店舗の前身「SHINY」というお店に在籍していた頃の話ですが、No.3くらいの実力を持つホストたちが辞職する事態が続いていました。ショックだったのは「りきさんは好きだけど、この店のやりかたが合わない」という理由を聞いたときでしたね。そのとき「りきさんが代表になるなら、戻ってきますよ」と話してくれた言葉が今でも心に残っています。僕が思う理想の組織像は、自分の価値観を押し付けるのではなく、全員が各々の目標を追いかけつつもチームワークがとれている組織です。当時そうした風潮ではなかったことで悩み、代表になって変えたいと強く思った記憶がありますね。
──「Stella」「Astra」では、思い通りの組織づくりはできましたか?
そこは、苦悩とつまずきがありました。「権力が集中する体制を変革したい」という気持ちで代表になり、2店舗の社長も務めたのに、あとから幹部の代表たちに話を聞くと、実は僕に言えないことがたまっていたことが判明したのです。そこで、「自分のやり方でやって欲しい」というメッセージを直接伝えましたね。自由に行動してもらって、それぞれの良さを引き出すマネジメントに徹しようと心に決めたのです。
──つまずきから学び、実践されていることはありますか?
「腹を割ってしゃべること」に尽きます。つまずきがあったのは、僕が2人の代表の特性を把握しきれていなかったことが原因ですが、そもそものところで「社長として、強く見せなければならない」という僕の気持ちが作用していました。だから、思いのたけを全部伝えるようにしたのです。勇気のいることでしたが、全部をさらけだしたことで、代表たちから本音を引き出すことができる環境になりました。
今は、「誰かひとりに寄りかかる」のではなく、幹部4人が集まってアイデアを出し合って方針を決めていきます。全員の意見をしっかりと聞いた上で、最善の策を導き出すのが僕の役割です。たとえばある幹部は「やる気のある精鋭部隊だけで、お店を切り盛りしてはどうか?」という、僕と逆の意見もはっきりと口に出してくれるようになりました。誰にも遠慮することなく、みんなが自由に発言できる空気が醸成されましたね。「任せすぎてもだめだし、かといって自分が突っ走るのも良くない」というバランス感覚を学びました。
将来の不安なく働ける環境に。ホストのセカンドキャリア支援への期待。
──今、どんなビジョンを思い描いていますか?
年内に掲げている目標をクリアすることです。現状の課題として、ホストとしてポテンシャルの高い人材が揃っているのにもかかわらず、活かしきれていないというもどかしさがあります。まずは高い戦力になってもらえるように、育成する仕組みづくりに目下取り組んでいるところです。それが第一段階で、次のフェーズとしては「アトム本店に売上で勝ちたい」という野望があります。他店は仲間であると同時にライバルでもあるので、切磋琢磨しつつ上を目指したいですね。
──最後に、将来の夢を教えてください。
大きな夢になるんですが、「アトムのホストというキャリアを、履歴書にかける」ようにしたいですね。現状では、どんなにアトムでホストを頑張って結果を出しても、その期間は履歴書や職務経歴書では空欄になってしまうのが本当のところです。だから現在、アトムグループが推進している「ホストのセカンドキャリア支援」に期待しています。アトムで働く全ての人たちが、将来を不安に思うこと無く働けるグループになることをお手伝いしたいですね。大学卒業後、進路としてアトムに入社しましたが、理由は本当に「ええやつ」ばかりだから。青春を捧げたアトム以外に選択肢はなかったですね(笑)。将来仮にアトムを卒業することがあるとしても、自分ができることを全部出し切ってからだと考えているのでまだまだ先の話です。