大阪・東京歌舞伎町・札幌すすきのに全国展開するホストクラブ・ATOMグループで史上初の「エリアマネージャー」に就任し、利他的な考えでグループの未来を切り開くひかるさん。ATOM TOKYO社長を経た上で、これまでに培ってきた独自のノウハウやマインドについて深堀インタビューしました。
これまでの苦悩。1000万プレイヤーを輩出した軌跡
——ATOM TOKYO時代の実績や苦労を聞かせてください。
大空ひかる(以下、ひかる):ATOM TOKYOは当時、グループ創業時からのメンバーである帝社長が取り仕切っていたのですが、以前のトッププレイヤー達がどんどん抜けていって、帝社長が退社されたタイミングで、僕が社長になったんですよね。
そうした厳しい状況の中で、ATOM TOKYOは抜本的な立て直しが必要な状態でした。そこで、これまでのやり方を見直して、従業員一人当たりの売り上げについて最低100万円を超えるレベルまで持っていき、年間グループ店舗売上ランキングでも全店舗中4位にまでたどり着くことができました。
年間グループ売り上げ上位3店舗は大型店舗(ROYAL・本店・梅田)のため、小箱の規模感のATOM TOKYOで全店舗中4位に食い込むことができたのは、僕の中での実績になるかなと思っています。
——当時の従業員総数は?
ひかる:20名を前後するくらいでした。
——少数精鋭でグループ年間売り上げ4位という数字を達成できた理由は何だと考えますか?
ひかる:教育担当をつけたのは、ある程度の売り上げのアベレージを出すためには適切だったなと思いますね。1000万プレイヤーになる伸び代を期待することよりも、アベレージ100~300万円のラインのプレイヤーを短期的に量産していくことに重点を置きました。そのため、個性的な売り方を創出するメリットは半減しますが、平均的な売り上げを上げるプレイヤーをベースとして作っていくことが可能となったのは大きな利点でした。今後は、ハイパフォーマーから良い要素を抜き出して、皆に当てはめつつ、底上げしていければと思っています。
——教育担当は誰が対応していますか?
ひかる:最初は僕と当時の副社長が教育担当となり、途中からは副社長に一任しました。現在は、副社長が退職し、新しい体制でATOM TOKYOを作り上げていくフェーズに入ったため、ひろむん社長を筆頭に教育体制を組み直している段階ですね。
——試行錯誤を行う中で、1000万プレイヤーが出てきたと伺っていますが、どんな経緯だったのでしょうか?
ひかる:1000万プレイヤーが出たのは、教育システムの成果というより、2022年にインフルエンサーの「へずまりゅう」がゲスト入店したことが直接のきっかけですかね。へずまが1ヶ月勤務して、1000万円を売る人間をスタッフ達が間近に見たことで、みんなが「この箱でも1000万円を売り上げることができる!」ということに気づき、そこから各自が1000万プレイヤーを目指すようになりました。
へずまは先月14日から「へずま迷人」の源氏名で、金髪に染め上げ、「CLUB ATOM TOKYO」で、ホストデビュー。月売り上げ1000万円を目標に掲げ、無謀かと思われたが、3日で600万円、1週間で1000万円をクリア。その後も売り上げを重ね、最終日となった6日は200万円のダメ押しで、最終売り上げは1360万円だった。
東スポWEB 2022年3月7日記事から引用
(https://www.tokyo-sports.co.jp/articles/-/159447)
2022年に、へずまが最初に1000万を売って、そのあとを追いかけるように柚貴れんが同年に1000万プレイヤーとなりました。この年、現体制で「初の1000万プレイヤー:柚貴れん」が誕生した流れです。
——1000万プレイヤーが生まれたきっかけは?
ひかる:僕の解釈では、当時のプレイヤー達は「300万円の売上を目指すこと」を第一に考えていました。だから、300万円を売る動きしかしていなかったんです。そこで、へずまが1000万円を売り上げたことによって、各々が「自分も目指そう!いけるじゃん!」と思えたのではないかなと思っています。みんなが1000万円売るにはどうやったらいいだろうと意識するようになったんです。そして結果的に、1000万プレイヤーが生まれたということですね。
——300万円の売り上げから1000万プレイヤーを出すための架け橋となる秘策とは?
ひかる:組数も必要ですし、お客様にたくさん応援してもらえるように努力する点ではどこのゾーンでも同じだと思います。100~300万円を売る売り方で、ベースは変えずに、試行回数を増やして、決死の覚悟で1000万円に到達したって感じだと思います。
——そこのフレームの中で獲得した女の子に、熱量を使っていったってことですかね。
ひかる:そうですね。だから、今の時代のホストの1000万円の売り方っていうより、昔の時代のホスト的な売り方で1000万円をクリアしているというイメージです。だいぶ胆力がいるので、れんも、代表の冬夜もみんなとてもしんどかったと思います。結果を求められていることによるプレッシャーもありますし…。
でも、昔の時代のホスト的な売り方に振り切ってしまうと、1億円を売り上げることが難しくなってくるんですよね。 継続が難しく、伸び代が限られるので、瞬間的に月間1000万円を狙うことはできても、年間1億円は狙えなくなるジレンマが生まれるんです。
——そこは現状も課題として残り続けていますか?
ひかる:現状としては、ひろむん社長がATOM TOKYOの運営に入って、着実にみんなの売り上げ作りに対する捉え方が変わってきているかと思います。 考える範囲が個人単位の売り上げアップじゃなくて、組織やお店をベースとして考えて、みんなで手を取り合って、店一丸となって売り上げを上げていくという感じですね。
「エリアマネージャー」就任したことは最善の決断だった——
——ここからは運営面での苦労などをお伺いしたいと思います。ATOM TOKYOのトップがひかるくんの社長就任以降、数年間変わらなかったと聞いていますが、どんな課題を感じていましたか?
ひかる:僕の個人的なことだと、「当たり前だと思っていたことが当たり前じゃなかったこと」ですかね。 店に出続けるのが当たり前、店に出ていなかったらサボってるみたいな固定観念がありました。どれだけ仕事を抱えていても、夜は必ず店に出て昼間にその他の業務を終わらせることが当然だと思っていたんです。そうすることで管理が手放せない状態になり、それが僕の仕事になってしまっていました。マイクロマネジメントってよく言いますけど、もうミクロマネジメントくらいになっていましたよ(笑)
——主軸になる右腕・左腕を作ることよりも、ひかるくんが完全に主体になっていたんですね。
ひかる:あまり良い表現ではないかもしれませんが、自分と同じ志を持つレベルの人材を作り切れていなかったなと、その時に感じました。だからこそ、業務を投げられなかったんです。もちろん冬夜や、かおちぇるなどは、本当に”ATOM一本でやります”って意気込みがあったんですけど、僕はその思いを汲んで、全てを任せることができませんでした。その子たちを育てなかった、ちゃんと信用し切れていなかったのは大きな反省点です。
—— ひろむん社長と運営を行う座組みになり、どんな発見があったかをお伺いしたいです。まずひろむん社長が来るってなった時はどんな感じでしたか?
ひかる:これは正直な話なのですが、僕が社長をやっていて本部との連携がまだ薄い頃に、グループの中でもATOM TOKYOが浮いた存在になっているように感じて、不安になっていた時期が長いことありました。
そんな中、ひろむが社長に就任して、新しい体制を作っていくとなった時に、ATOM TOKYOは一体、今後どんな扱いになるのか、疑問に思っていた時があったんです。
そこから「僕は本来何をしたいのか」と自問自答するようになったんですよね。自分で会社を立ち上げて成功して、みんなを何とかしていきたいのか。そもそも僕はATOMグループに属していたいのか……自分自身に問いかけました。
「じゃあ何でホストをやってるの?」って自分に問いかけたとき、やっぱり僕はATOMグループが好きだからホストをしてるんだなと強く思いました。この考えや思いを会長へ話している中で、「一回ひろむと話してみて」と言われたんです。
ひろむとの話し合いで、”僕はあくまでもATOMグループのために働きたいんだ”と伝えました。東京の子たちもグループのことが好きで、グループのために東京店舗を成長拡大させるのが僕のミッションだとも話しました。
ひろむが総社長になり、東京店舗のことも一緒に考えてくれるなら、僕はその選択肢を取りたいと伝えたんです。この思いに対してひろむは、『ひかるさんは独立も視野に入れているのかと誤解していたところがありました、これからぜひ一緒にグループとして東京エリア拡大に向けて頑張っていきましょう!』と言っていました。
——独立の方向にマインドがいってるんじゃないかと捉えられていたんですね。
ひかる:そうですね。その誤解を解くことができて僕自身もすごくスッキリしました。更に、ひろむから、僕の仕事がミクロマネジメントになっていることを指摘されたんです。それが僕の気付きになりました。現場に入りすぎて過保護になっているから、誰も成長できない状況を自分自身で作ってしまっていると言われたんです。「ひかるさんは従業員を信用できてない」「この子は成長する子だっていう目線で見れてない」と言われて、あ、そうだなーと痛感しました。言ってくれてありがとうって思いましたね。
——その後、ひろむん社長との話し合いの中で、ATOM TOKYO社長からエリアマネージャーとしてグループ全体を見ていく話が出たのでしょうか?
ひかる:ひろむの頭の中では、”ひかるは社長よりエリアマネージャーの方が力を発揮できる、適材適所はここだ”と見抜いていたんだと思います。僕はひろむが総社長でいるんだったら、社長を降りてもいいと思っていました。報酬面も名前も変わりますが、それでも自分の力を出せるところにいきたいと思っていたんです。未来を考えたとき、それが東京店舗が発展する可能性が高い選択肢だと感じていました。かっこよく言ったら、エリアマネージャーに就任することは、僕が社長としての最後の責務を果たすための、重要な決断だったと思っています。
——社長職を自ら降りてグループの中に貢献することこそが最大の仕事ということでしょうか。
ひかる:はい!僕はずっと、そんな風に自分に言い聞かせています。
——エリアマネージャーのお仕事はどんな立ち位置ですか?ひろむん社長から伝えられた内容もお聞きしたいです。
ひかる:ひろむは僕にエリアマネージャーの仕事を伝えるとき、あえて僕に対しては、かなり抽象的に伝えてくれました。だから僕は詳細なタスクは自分自身で考えますし、その方が成長できていると思えるから、楽しいんです。どんな風に伝えたら良いのかをわかってくれていると感じて、信頼できましたね。
エリアマネージャーに就任してから最初に伝えられた仕事は、「満足度を高めること」でした。僕はエンゲージメントを高めてほしいというオーダーだと解釈して、何をすべきかを考えました。
——エンゲージメントに対する主語は、例えばどんなものですか?
ひかる:グループ愛とか会社を愛するということだと思っています。各個人が組織に貢献できていると感じたときに、会社への愛が生まれるという考え方です。報酬面などで達成感を得るのではなく、組織やATOMグループの発展に尽力できている、役立っていると感じられたときに、その組織に対してのエンゲージメントが高まるんじゃないかなと僕は捉えました。
——現状、エンゲージメントを高めるという目的に対して、どんな指標を持って今動かれていますか?
ひかる:そこから本部隊と会議を重ねていきました。そして、ひろむから、本部隊の各メンバーに対して注力してほしい業務内容を、役割分担して詳細に伝えてくれたんですよ。主に、僕の長所を見抜いたノウハウ教育に対してのミッションが与えられました。
一人一人が売り上げを上げるために、僕が必要なリソースを提供できる人になることが重要だと思いました。だから各店舗に入って、ノウハウ吸収や情報集めを行うことを大切にしています。それらを自分でまとめて提供したいんです。ただあくまで課題点を解決するのではなく、解決するためのリソースを提供する役回りにならなくてはいけません。その塩梅が、僕の今の課題点です。
——アドバイスを送り、経過観察をして、店舗の従業員達に自ら解決させることが重要なんですね。
ひかる:そのミッションを与えられて、現段階で考えていることは、講習会をプレイングマネージャー向けに行おうかという案です。そこで集めたスキル面や技術面をまとめてビデオ学習できるようにしようとしています。ビデオ学習資料を本部に蓄積しておいて、誰でも勉強できる環境を整えたいんです。マネジメント教育を、コストをかけずにできるところもメリットだと思っています。
エンゲージメントを高めることで、僕の解釈では全体の生産性が高くなると思っています。全体的に効率化を図って稼働させることで、組織の売り上げが高くなると思うんです。エリアマネージャーの役割は売上高の最大化だと思うので、そこを念頭に置いています。その他、店舗ごとの成果や業務内容の向上について、総社長や会長から求められていることもあります。そういった部分を組織の売上高の最大化に繋げられたとき、僕はエリアマネージャーだって胸を張って言えるようになると思っています。
——実際にノウハウ教育に動いている店舗はどこですか?
ひかる:東京の店舗では、今まで通り調整役に回っています。あわせて今はひろむ系列だった店舗に対して、課題点の解決に向けたSVコンサルを行っています。これからどうしていこうかって考えると、自ずと店長や代表クラスと話すことになるので、その入口に立っている感じです。
今後のグループの展望。見えているものは——
——ひろむん社長での新体制。これからのATOMグループの展望や課題点は?
ひかる:グループの展望としてはもちろん、店舗を拡大して売り上げ100億円を目指すことがミッションです。それを踏まえて、”人”が重要だと感じています。僕がエリアマネージャーとしての成功を突き詰めれば、僕の部下ができたり、違う仕事が生まれてきたりするんですよね。組織の売り上げが上がっていくにつれて、違う職務も増えていく。みんなが働く場所が生まれていくんじゃないかなと思っています。
——新たな役割の椅子がどんどん確保されるってことですよね。
ひかる:例えばで言ったら、かおちぇる。今のままだと店舗のプレイングマネージャーでやっていくことになりますが、僕がエリアマネージャーとして突き進んでいくことによって、かおちぇるがステップアップできる場所が増えると思うんです。そうすると、全店舗でみんなの働く場所が増えます。ひろむの作る理念には、”幸福について考える”というのが絶対にあるんです。この理念から考えた時に、これが幸福の繁栄かなと思います。
今後は運営層も兼任しながら、経営層にどんどん入っていけるようにやっていきたいです。この本部隊はいずれ経営層に入る人材が集まっていると思っています。
——経営層としても活躍できるような座組みを将来的にやっていきたいということでしょうか?
ひかる:経営層のビジョンを変えたいというよりは、ビジョンを明確化してあげたいというのが正確かなと思います。もし経営層と話をするのであれば、会長のビジョンを明確化して、それを僕がみんなに伝える役目を担っていきたいですね。
——経営層のビジョンを読み解いて、スピーカーとして発信していきたいんですね。
ひかる:スピーカーの役割を行い、映像化もしてあげたいです。それに僕は、東京時代に社長職として経営についても考えていたので、コスト面も重視していきたいなと思っています。現在のホストバブルによるホスト業界のシェア拡大が、将来的には一旦閉じていく可能性があると僕は考えていて、次の波に向けて、どれだけ利益率を上げられるかが重要になってくると思うんです。新しい時代のホスト業界のシェア拡大を確立した時に、利益率をどれだけ蓄えるかを見据えていきたいです。その売上高に対して、新たな事業に投資していけるような戦略を立てるのも、楽しそうなんでやりたいですね。組織体制を明確化していくことで、幸福も追求できると思っています。
——補足質問ですが、ひかるくんのような考え方やマインドを獲得するためにおすすめの本はありますか?
ひかる:これ教えたくないな〜(笑)1冊ありますよ。『人望の法則』です(著者は西田文郎)。 東京の子たちがこれを読んだら、ひかるさんはこの本の内容を話しているだけだってなると思います(笑)
この著者は科学的なメンタルトレーニングを研究していて、脳についても詳しい方なんです。人間の脳の構造に沿って、カリスマ型リーダーと人望型リーダーの違いが記されています。30人規模ならカリスマ型リーダーでまとめられるけど、その先は人望型リーダーにならないといけないといった内容です。有名な経営者が成長していった様子を交えているからわかりやすいんですよ。先を見据えた目標がある方にはとてもおすすめの1冊です。本気の人間が読んだら、絶対に損しないと思います。
——ありがとうございます。それでは最後に、これからATOMグループで働きたい方へ向けたメッセージをお願いします。
ひかる:お金を稼ぎたいというのはもちろんだと思いますけど、お金を稼ぎたい先の目標があるのであれば、ATOMグループだと思います。お金を稼ぐことだけが目的なら、どのホストグループでもいいんじゃないかなと思うんです。ただその先の人生の目標、目的、どうやって死にたいかというところまで考えるなら、それらに対してはATOMグループがホスト業界の中で一番向き合っていると僕は確信しています。人生をより良くしたいなら、僕がしっかりサポートしていきます!